平成28年12月定例会

平成28年(2016年) 12月定例会

平成28年12月13日(火)

1. 特別支援教育の充実について


田中文代の発言は、背景を青色で表示しています。

◆田中文代
チーム創生の田中文代です。通告に従いまして、一般質問を行いますが、午前中の安藤議員の御質問とあわせて、皆さんの発達障害に対する理解を深めるものになれば幸いです。

先月、12日から13日にかけて、「本当に必要な支援とは?」というテーマを掲げ、宇部市文化会館において第116回日本小児精神神経学会が開催されました。この学会は、子供たちの発達や心の問題を巡り、50年以上にわたってさまざまな活動を続け、近年では特に発達障害に関しての幅広い研究発表の場となっています。今回、大会長を務められた本市の医療法人テレサ会西川医院、発達診療部発達障害研究センターの林隆先生は、御挨拶の中で次のように述べられています。

このテーマの根底には発達障害を発達的少数派と捉えた上で、少数派の特性を理解することが合理的な支援には不可欠であることを強く訴えたいという私の思いがあります。正規分布で平均から離れた位置にある少数派とは決して遅れのある子ばかりではなく、標準より優れた能力のある発達をしていたとしても少数派なのです。平均からどちらに離れても多数派向けに作られた世界では生き難いものなのです。

私は、林先生のこの言葉に、少数派であるがゆえにかけがえのない、取り戻しのきかない学童期の教育の現場から、隅に追いやられてきた多くの子供たちやその保護者の方たちのやるせなさを改めて痛感しました。

発達障害に関しては、2005年に発達障害者支援法が制定されて、既に10年以上が経過していますが、恐らく今後、最も彼らの支援に効力を発揮してくるのは、本年4月に施行となった、いわゆる障害者差別解消法ではないかと考えています。

この法律の2本の柱である不当な差別的取り扱いの禁止と合理的配慮の提供のうち、後者の合理的配慮の提供が、今後、どれだけ的確に教育の現場において実現されるのかが、本市で育ちゆく子供たちが皆等しく教育の機会を与えられ、より豊かな学びを享受する学童期を送ることができるのか否かということに、大きく寄与してくるものと考えられるからです。

そこで、私の今回の質問ですが、特別な支援を要する子供たちの教育の充実について、大きく2点についてお伺いしたいと思います。

質問の大きな1点目は、学習障害の実態とそこから浮かぶ課題についてで、これについては4項目について質問させていただきます。

学習障害は、英語のラーニング・ディスオーダーズ、またはラーニング・ディスアビリティーズを略して、一般にLDと呼ばれている発達障害の一種で、知的におくれはありませんが、読む、書く、話す、計算などの特定分野で困難を伴う障害のことです。文字を読む能力に障害があり、よく似た文字が理解できなかったり、どこを読んでいるのかわからなくなってしまったりといったディスレクシア、文字を書くことが苦手で、鏡文字を書いたり、黒板の文字を書き写すことが苦手だったりするディスグラフィア、数字や記号の理解、認識ができない、簡単な計算ができないディスカリキュアなど、原因は脳の機能障害と言われていますが、まだはっきりとは解明されていません。

皆さん、よく御存じの、アメリカの映画監督スティーブン・スピルバーグ氏やハリウッド俳優のトム・クルーズ氏は、みずからが学習障害であったことをカミングアウトしています。トム・クルーズ氏は台本の文章が理解できないので、セリフを覚えるときはテープに全てを録音し、繰り返し聞いて、耳から覚えたというエピソードが伝えられています。

このように、知的に障害はないけれど、何らかの学習機能に障害がある子供たちが本市においても確かに存在しており、そういった、教室でのほかの子供たちと同じ指導では、勉強についていけない子供たちのために、通級指導教室というものが設けられています。現在、小学校では岬・新川・東岐波・厚南・恩田・上宇部の6校、中学校では神原・東岐波・常盤・上宇部の4校に通級指導教室が設けられており、子供たちは週に1時間から3時間、決まった時間に通級して個別の指導を受け、他校からの通級の場合は保護者の送迎が原則となります。

それでは、以下4項目についてお伺いいたします。

ア、学習障害のある児童生徒の把握について、その内容は。

イ、通級指導教室の利用の実態は。

ウ、改善すべき点をどのように捉えているか。

そして最後にもう1点、エとして、今後、本市の通級指導教室をより進化させる方法として、いわゆる教育特区の創設のような新たな支援の方法についてのお考えはないか、その可能性についてもお伺いしたく思います。

続きまして、質問の2点目です。本市においては、白石前教育長の時代より、学びの創造推進事業を展開され、学力向上はもとより、生きる力を育む教育として、市内全校において学び合いの授業を実践しておられ、私も時間の許す限り、各校の公開授業研究会の見学に出向かせていただいて、学校が変わりゆくさまを目の当たりにさせていただいているところです。

が、1つ気になるのは、特別な支援を要する子供たちが、この学び合いの範疇の中にきちんと入っているだろうかということです。通常学校に在籍する発達障害等のある子供や、通常学級に交流学習として入っている特別支援学級の子供たちは、きちんと学び合いの中に入っているでしょうか。個々のケースでそれぞれに教師の方々が配慮されていることとは思いますが、ともすれば、特別な支援を要する児童生徒たちが福祉という範疇に置かれ、教育という学校本来の目的からは外れたところに置き去りにされているのではないかと懸念されるところです。今一度、このような特別な支援を要する児童生徒に対しての学び合いについて、本市のお考えをお示しいただけたらと思います。
以上で、私の壇上での質問を終わります。

◎野口政吾教育長
田中議員の御質問にお答えいたします。
御質問、特別支援教育の充実について。

第1点、学習障害の実態とそこから浮かぶ課題。

ア、学習障害のある児童生徒の把握についてのお尋ねですが、本市では、小学校入学後において、学習障害のある子供一人一人の特性に応じたよりよい支援が行えるよう、5歳児健診や就学時健康診断の実施、児童相談所や医療機関等との連携などにより、学習障害のある子供の早期把握を行っています。平成28年8月1日現在、学習障害の診断を受けている児童生徒は14名、学習障害の疑いのある児童生徒は85名の計99名となっており、これらの児童生徒に対しては一人一人の特性等に応じた合理的配慮を提供しながら、必要に応じ、通級指導教室において指導を行っています。

イ、通級指導教室の利用実態についてですが、通級指導教室は、学習障害を初め、注意欠陥多動性障害、自閉症等のある児童生徒を対象としており、障害による学習等の困難の改善・克服を目的とした指導を行っております。本市では、先ほどおっしゃられたように、平成10年に初めて岬小学校に通級指導教室を設置し、それ以降、指導を必要とする児童生徒のニーズに適切に対応しながら、年次的に増設してきたところであり、現在では小学校6校、中学校4校の10校に設置しています。

次に、学習障害を含めた利用者については、平成23年度の小学生59名、中学生3名の計62名から、平成25年度には小学生78名、中学生10名の計88名、平成28年度現在では、小学生92名、中学生19名の計111名と増加傾向にあります。

次に、《平成2年度》(《 》は59ページで訂正)の通級指導教室の利用者のうち、学習障害に係る利用者は22名となっており、このうち診断を受けている利用者は4名となっています。

また、在籍している学校に通級指導教室が設置されていないため、他校に通っている児童生徒は、利用者111名のうち小学生31名、中学生3名の合計34名となっています。

ウ、改善すべき点についてですが、まず、児童生徒の在籍している学校に通級指導教室がない場合、他校の教室へ通級しなければならないことから、保護者に負担がかかるということが挙げられます。

次に、通級指導教室へ通う児童生徒は、年々増加しており、そのニーズに応えるためには教員の増員が必要です。また、一人一人の特性に応じた、よりきめ細やかな指導を行うための個別の教育支援計画等が十分に作成及び活用されていない状況にあります。

エ、学習障害のある児童生徒に対する新たな支援の可能性についてですが、通級指導教室については、平成29年度に新たに1カ所増設していきます。

また、さらなる増設と児童生徒に対するきめ細やかな指導を行うため、教員の増員について、引き続き県を通じて、国に対して強く要望していきます。

また、岬小学校に設置している幼児を対象とした通級指導教室であることばの教室の活用を含めた指導体制の再構築を検討していきます。

さらに、就学前から卒業後にわたる切れ目のない支援体制の構築を目的とした国のインクルーシブ教育システム推進事業を平成29年度に実施することとしており、このなかで保健・医療・福祉等の関係機関と連携を図りながら、個々の児童生徒への通級指導教室での個別の教育支援計画等の作成と活用に取り組みます。

教育委員会では、こうした取り組みにより、学習障害のある児童生徒の自立と社会参加を目指し、本人の特性に寄り添った、切れ目のない支援を行っていきたいと考えています。

第2点、特別な支援を要する児童生徒に対する学び合いの考え方についてのお尋ねですが、教育委員会では、平成20年度から学びの創造推進事業に取り組んでおり、子供同士がかかわり合い、協働的に学び合うことで、全ての子供の学びと育ちを保障する学び合いのある授業づくりを行っています。

この授業では、子供たちが、わからないときや困ったときは友達に尋ね、それに答え合い、学んでいく活動が行われ、主体的な学びにつながります。

また、小グループでの学習において、教員は、子供と子供をつなぎ、学び合わせることで、一斉指導では学びが成立しにくかった通常の学級に在籍する発達障害等のある子供や、交流学習を行っている特別支援学級の子供の学びも保障することができます。

これまでの取り組みの中で、子供たちは友達とかかわり、聞き合う関係を築きながら、みずから学び、みずから考えることができる力を身につけてきました。

また、教員は、学ぶことに向き合えない子供がいれば、子供同士をつなぐことや魅力的な教材を提示することなど、子供が学びと向き合えるよう、日々、工夫を行っています。

教育委員会では、これからも全ての子供の学びと育ちを保障するとともに、他者を思いやる心を育み、子供たち一人一人の将来の自立に向けた教育を推進します。

以上で、私の壇上での答弁を終わります。

 

◆田中文代
御答弁ありがとうございました。

それでは、再質問、要望等に移らせていただきたいと思います。

まず、再質問の1点目ですが、アの学習障害のある児童生徒の把握についてです。

学習障害の診断を受けている児童生徒、疑いのある生徒も含めて、計99名について必要に応じて通級指導教室において指導を行っていると御答弁がありましたが、通級指導教室に通われるには、保護者の方がお子さんの学習面での困難さに気づいておられる、認識しておられるという前提条件が必要かと思います。

そこで、危惧するのは、周りは気づいて心配しているけれども、保護者の方にはその認識がない、周囲からはお子さんのことについてなかなか告知ができないといった理由で、通級指導教室での指導までつなげられていないお子さんがいるのではないかということですが、この点についてはいかがでしょうか。

◎野口政吾教育長
お答えいたします。

教育委員会では、本人、また、保護者の意見をしっかりと十分に聞いた上で、通級指導教室での指導の必要性を十分検討し、指導方法等を決定していますので、そのような児童生徒はいないものと考えております。

以上でございます。

◆田中文代
ありがとうございます。心強いお答えをいただきました。

周囲の無理解に悩む保護者の方が多いという現実も、確かにあろうかと思います。お母さんはお子さんの状態がわかっていても、お父さんにはその理解がない。あるいは祖父母の方に御理解がないということで、お母さんが家庭の中で孤立するというようなお話も聞きます。障害の告知を、先ほどの安藤議員のお話にもありましたけれども、告知自体が責め苦のようになってはいけないと。この告知をもらうことで、新たな一歩を踏み出せるような、安心して自分の子の教育に取り組んでいけるようなものになるように、これは教育だけの問題ではありませんが、ぜひ今後も、行政の方には庁内一丸となって、この姿勢を続けていっていただきたいと思います。

続きまして、質問1点目のイ、通級指導教室の利用実態についての再質問です。

ことし、平成28年度の通級指導教室の利用者のうち、学習障害にかかわる者の人数は22名、そのうち、診断を受けている者の人数は4名との御答弁がありましたが、アの把握状態についての御答弁では、学習障害の診断を受けている者の人数は14名とありました。診断を受けている残りの10名が通級指導教室を利用されていない理由は、どういったものでしょうか。

◎野口政吾教育長
お答えいたします。

通級指導教室を利用していない10名については、先ほど申しました、本人や保護者の意見を十分に聞いて、その必要性を検討して、通常学級での指導が適切であると判断したことにより、通級指導教室に通っていないという状況でございます。

以上でございます。

◆田中文代
ありがとうございます。

共通認識のもとでそういう状態になっているということで、理解いたしました。

続きまして、1点目のウ、改善すべき点についての再質問です。

御答弁では、通級指導教室が設置されていない学校の児童生徒については、他校の教室へ通級しなければならないことから、保護者に負担がかかっているということを挙げておられましたが、実際に保護者の方が他校への通学を負担に思って通学を諦められたというような事例はあったのでしょうか。

◎野口政吾教育長
お答えいたします。

児童生徒の移動時間にかかる負担や、保護者の送迎の負担があるために、北部地域の学校から、近くに通級指導教室が欲しいというような声は聞いているところです。

◆田中文代
そういった保護者の方の声をぜひしっかり聞いていただいて、何らかの策を取っていただければと思います。

この通級指導教室についての通学に関しましては、交通費については補助が出るということを伺っておりますが、やはり、働いていらっしゃるお母様も多いことですし、なかなか時間を取って子供さんを通級指導教室に連れて行くということは困難ではないかと思います。壇上でも申し上げましたが、少数であるがゆえに、こういったことを強いられるというのは、憂慮すべき点ではないかと思います。ぜひ、今後の通級指導教室の考え方、後ほど申し上げますが、改善していただきたい点ではございます。

同じく、改善すべき点についてもう1点、お伺いいたします。

御答弁の中では、ニーズに応えるためには教員の増員が必要と、はっきりとおっしゃられました。実際のところ、どのくらい足りていないのでしょうか。この件につきましては、県内他都市の状況とあわせて教えていただければと思います。

◎野口政吾教育長
お答えいたします。

通級指導教室に通う児童生徒は増加傾向にあります。設置数の増加や、さらにきめ細やかな支援を実施するためには、増員が必要と考えておりますが、適正な人数につきましては、今後精査していく予定でございます。

また、県内の通級指導教室の状況について、県内全体の数字でございますが、通級指導教室に通う児童生徒数は、平成23年度には1,080人、平成25年度には1,295人、平成28年度には1,660人と増加傾向にあるにもかかわらず、指導する教員数は微増という状況でございます。

以上でございます。

◆田中文代
お答えから、大変深刻な問題が浮かび上がってまいりました。教員の数については、今後、精査していかれるということですが、やはり、県や国の支援を待つ前に、何か市でできることを考えていくべきではないかと思います。退職された教職員の方とか、校長会などを通じて、ぜひこういう支援の要請と申しますか、声を上げていただければと思います。

もう1点、改善すべき点についてお伺いします。

御答弁にありましたが、個別の教育支援計画ですね、特別支援教育の現場に導入されてもう10年以上経つわけですが、御答弁の中では十分に作成及び活用がされていないということでした。この個別の教育支援計画の活用が進まない背景をどのようにお考えでしょうか。

◎野口政吾教育長
お答えいたします。

個別の教育支援計画等が十分に作成・活用されていないということは、言われるとおりですし、これは全国的な課題ともなっているところです。

この背景としては、個別の教育支援計画を作成・活用することで、よりきめ細やかな支援ができることや、次の学年や学校等に支援内容を引き継ぐことができる等のメリットがあることについて、本人・保護者・教員の理解がなかなか進んでいないことが理由として考えられます。

以上でございます。

◆田中文代
メリットについて周知がされていないということですが、メリットは実際にあると思います。私も知的障害の子を育てた経験から、ちょうどこの子が小学校のころにこの個別の教育支援計画が導入されましたが、教育面におきましては、やはり重要なものですので、今後とも、ぜひ活用を進めていっていただきたいと思います。

それと、先ほど安藤議員のお話の中にもありましたが、本市におきましては官民共同で構成されております、発達障害児を支えるネットワーク協議会、通称、児ネットと呼んでおりますが、これがもう長いこと活動を続けておりまして、その中でも先ほどお話に出てきました、パーソナル手帳というものをつくっております。これも、子供たちの豊かな育ちをできるだけサポートするようにということでつくられたものですが、なかなか活用が進んでいないという実態がありまして、今、改訂作業に入っておられると思いますが、これについてもあわせて教育の中にもしっかり入れていただいて、活用していただければと思います。

続きまして、エ、学習障害のある児童生徒に対する新たな支援の可能性について、お尋ねいたします。

平成29年度に通級指導教室を新たに1カ所増設されるとのことですが、これはどこでしょうか。

また、ことばの教室の活用を含めた指導体制の再構築を検討するとの御答弁がありましたが、具体的にはどういうことでしょうか。

◎野口政吾教育長
お答えいたします。

西宇部小学校に新たに通級指導教室を開設予定としております。その理由といたしましては、西部地域における通級指導教室の需要が増加傾向にあり、また、通級指導教室のない北部地域からの送迎に関する保護者等の負担を軽減するためでございます。

ことばの教室の活用ということでございますが、これにつきまして、ことばの教室は現在、幼児を対象としておりますが、児童生徒も対象とすることにし、現在10カ所ある通級指導教室と一体的になって児童生徒を支援していきたいと考えております。

以上でございます。

◆田中文代
ありがとうございました。

続きまして、御答弁の中にありました新たな支援の可能性についてですが、国のインクルーシブ教育システム推進事業を実施すると、来年度からですね、お答えがありました。この事業の概要と、宇部市での取り組みがどのようなものになるのか、具体的には何がどう変わって、私が壇上で申し上げましたような教育特区ですね、そのような創設と同様の大きな変革が期待できるものなのかどうか、お答えいただきたいと思います。

◎野口政吾教育長
お答えいたします。

国のインクルーシブ教育システム推進事業は、特別な支援を必要とする子供の就学前から学齢期、そして、社会参加までの切れ目のない支援体制を整備することを目的として実施するものです。

本市の取り組みとしては、教育・保健・医療・福祉・労働等、関係機関が連携して支援する仕組みづくりや、個別の教育支援計画を活用した引き継ぎの仕組みの構築などを行うこととしております。

また、サポートブックの作成や、先ほどおっしゃられたパーソナル手帳の改訂等も予定しており、その他の取り組みについても現在、検討しているところでございます。

本事業の効果といたしましては、学習障害のある児童生徒を初めとした障害のある児童生徒への一人一人の支援の充実が図られ、自立と社会参加を目指した切れ目ない支援体制の構築が図られるものと考えています。

以上でございます。

◆田中文代
ありがとうございます。大いに期待したいと思います。

壇上で触れさせていただきました、本市で開催されました第116回日本小児精神神経学会の場において、基調講演をされました東京大学先端科学技術センターの中邑賢龍教授のお言葉を御紹介させていただきます。一斉指導が中心で、おくれることなく協調的に行動することを求められる日本の学校の中では、行動がユニークな子供たちは不適応を起こすことが多い。その子供の多くは発達障害と診断され、療育機関で治療・教育を受けるが、その改善は多くの場合、即効的ではなく、大きなものではない。そのため、学習のおくれは拡大し、そのプロセスにおいて自分の認知や性格特性を否定され、自尊感情を損ない、ひいては二次障害に移行するケースもある。これは、社会的に見ても損失である。教育の問題は、もっと医療モデルからか離れるべきではないかということでした。

教室の中には、みんなと同じような学び方ではできないけれど、違うやり方ならきちんとできるという子が確かに存在します。彼らは少数ですが、彼らの特性を障害と捉えて補おうとするのか、個性と捉えて伸ばすのか、教育の問題は重要です。産業構造の変化や技術革新によって、こういう子供たちが将来、才能を発揮する場が生まれ、あるいはみずからつくりだすということも十分に考えられます。彼らは恐らく、人に使われるのは苦手ですが、ユニークな発想で新しい仕事を生み出すかもしれません。壇上で、スピルバーグ監督やトム・クルーズ氏の例を挙げましたが、本人の持つ才能を存分に生かすことによって、障害による扶助の対象から、優良な納税者となる可能性も十分に考えられます。少数だからといって、決してないがしろにされることがないように、御答弁には、教育委員会では、これからも全ての子供の学びと育ちを保障するとともに、子供たち一人一人の将来の自立に向けた教育を推進しますとありましたが、そのお言葉を、ぜひこういった特別な支援を要する子供たちの保護者や支援者たちがより実感できる施策として実現していただけるように強く要望いたしまして、私の全ての質問を終わります。

ありがとうございました。

◎野口政吾教育長
済みません。質問の第1点、通級指導教室の利用実態に関する答弁中、誤って「平成2年度」の利用者のうちと、こちらのほうが答えたと思いますけれど、正しくは「平成28年度」の利用者でございました。訂正してお詫び申し上げます。