平成25年(2013年) 9月定例会
平成25年9月11日(水)
1. 今後のバス事業について
田中文代の発言は、背景を青色で表示しています。
◆田中文代
おはようございます。新風会の田中文代です。通告に従いまして一般質問を行います。
2年前になりますが、平成23年の6月議会に、私は議員になって初めての登壇において、本市における今後のバス事業のあり方について質問をいたしました。車がないと生活できないという多くの市民の方々のごく素朴な声を発端に、本来、もっと市民に活用されてしかるべき公共交通の現状と今後について問うたものですが、そのときの執行部のお答えの趣旨は、交通施策という視点から総合調整を行うため、平成22年度に専門部署を設置し、住民ニーズの掘り起こしや地域特性にあったきめ細やかなバス運行、まちづくりと連携した仕組みづくりに取り組んでいるというものでした。
あれから2年が経過した今、市民にとっては、バス交通の利便性が上がったという実感もさして感じられず、高齢化率は自然に上昇し、交通弱者がふえてきている現状にもかかわらず、路線バス利用者の減少には歯どめがかからない、事業会計としては、依然として毎年多額の補助金を投入し続けているという現状について、今回改めて市がバス事業についてどのような構想を持ち、それに向かう具体的な施策をとられておられるのか、確認させていただきたいと思います。
私が一般質問を行った2年前の決算審査特別委員会に資料として出された平成22年度の宇部市公営企業会計決算審査意見書の交通事業会計に関する項の結びには、こうあります。
今後の事業経営に当たっては、乗合事業において運行ダイヤの最適化を目指した路線の再編及びダイヤ改正の検討が、また、貸切事業においては、主催旅行や各種団体への積極的な営業活用に取り組むなど、従前にも増した経営努力が望まれる。
また、事務事業の見直し、サービスの向上、人材育成の推進、定員管理及び給与の適正化などを掲げた「経営改革プラン」の着実な推進により、経営の安定化を図るとともに、今後とも市民に愛され親しまれるバスとして、地域に必要な生活交通の確保という公営バス事業としての役割を担われるよう要望する。
また、翌年の平成23年度の決算審査意見書の結びは、以下のとおりです。
市民が安心し、かつ、利用しやすくするため、市民の細やかなニーズを取り入れた運行案内システムの充実、利便性向上のための運行ダイヤの改正等たゆまぬ努力を行うとともに、新たな顧客開拓のため、積極的な営業活動が望まれる。
また、「交通事業経営改革プラン」には、利用者サービスの向上を図るための計画が網羅してあるが、これらの計画を着実に実施し市民のバス離れを食い止めるとともに、高齢化社会に欠くことのできない交通事業の継続のために経営基盤の強化が急務である。
急速な高齢化社会に対応し、地域での生活に必要な交通手段として、安全運行にも最大限の注意をはらいながら、公営バス事業者の使命を確実に果たされることを要望する。
以上、毎年のように問題点に対する改善要望やバス事業のあるべき姿について要望が出されてきたわけですが、要望を列挙するだけならいかにも簡単です。これらの要望に対して、具体的な策が実行されているのか、以下大きく2点について質問させていただきたく思います。
質問の1点目は、交通局を1つの企業体として考えたときの経営基盤についてです。平成22年度における、交通事業の一般会計からの補助金決算額は2億5,364万9,000円、平成23年度は2億5,253万円、平成24年度はまだ決算審査特別委員会が終わっておりませんので、案の段階ではありますが、2億4,656万8,000円。そして、今年度の予算計上においても2億3,471万5,000円と、毎年2億円を超える巨額な補助金をつぎ込みながら、顧客はふえず利益が上がらない、民間企業ではあり得ない現状についてどう捉えておられるのか、考えをお聞かせください。
質問の2点目は、これまでの決算審査意見書の中で繰り返し言及されている利便性向上のための路線及びダイヤの再編についてです。
前回の質問でも申し上げましたが、市民がバスに乗らない第一の理由は、その利便性の低さです。便数が少ない、乗りたい、行きたい場所に走っていない、乗り継ぎができない、できたとしても待ち時間が長すぎるなど、とにかくバスは不便な乗り物というのが、多くの市民がバスに対して抱いている印象かと思います。
この先バスの便数はふえるのか、利用者が少ない現状では、実質的な営業収益に乏しく、便数をふやすための車両確保、バス運転手の方たちの人件費など、諸般の経済的な理由から無理であるということなら、この悪循環をとめることはできないと思われますし、それなら現行の路線やダイヤについて何か重点的に具体的な改善策はあるのか、交通局を一つのサービス企業として位置づけたとき、顧客目線の戦略は立っているのか、教えていただきたいと思います。
私は、2年前に議員の任をいただいて以来、機会のあるごとに市民の方たちから、市政について広くお声をいただく努力をしてきたつもりですが、そういう場においてほぼ必ず御意見として上がってくるのが、この市営バスの問題です。ぜひ市民の方に納得のいく真摯な御答弁をいただければと思います。
以上で、私の壇上での質問を終わります。
◎久保田后子市長
皆様、おはようございます。また本日もよろしくお願いいたします。
それでは、田中議員の御質問にお答えをいたします。
御質問、今後のバス事業について。
第1点、経営基盤のあり方についてのお尋ねですが、近年、全国的にバスや鉄道などの公共交通利用者が減少し、不採算路線の廃止が相次いでいます。結果として、移動手段のない人が、買い物にも病院にも行けなくなるといった問題が深刻化しています。
こうした中、公共交通は生活に必要な移動を保障し、安全で快適な交通サービスを安定的に提供するという重要な役割を担っています。さらに、本市の交通事業は、今後、自家用車に頼らないまちづくりや、低炭素社会を目指したまちづくりを政策的に、また戦略的に進める上でも、欠かせない役割を担うと考えています。
経営基盤のあり方については、バス事業者においては、その役割を果たすため、国及び県、市の補助金を受けて事業を行っている現状にありますが、安定的な経営のためには、利用者増を図ることが急務である一方、不採算路線の検討が必要となっています。
このことから、公共交通の確保・維持を前提にした公共交通の総合的な方針と交通戦略を策定するため、宇部市の公共交通のあり方検討協議会を設置し、市民、関係機関を交えて協議を進めているところです。
現在、バス交通やJR、コミュニティー交通など、公共交通の役割分担について検討されており、今後、その議論を踏まえ、役割に応じた効率的な路線の見直しを進めていきます。
また、最終年度を迎える宇部市交通事業経営改革プランを着実に推進し、乗合及び貸切事業の増収対策に取り組むとともに、今後、新たな経営改革プランを策定して、より一層の経営努力によって経営基盤の強化に取り組んでまいります。
第2点、バス交通の利便性向上策についてですが、これまで利便性を向上し利用者の増加を図るため、バス停留所施設の整備やノンステップバスの更新、運行案内システムの充実、ダイヤ改正、乗り継ぎをよくするための路線の見直しなどを継続的に行ってきましたが、利用者の減少傾向は続いており、御指摘されたとおり、交通事業の経営環境は依然として厳しい状況にあります。
こうした中、新たな取り組みとして、平成25年度は、バス利用者が、乗りたいバスを簡単に判別できるようにするための路線番号制の導入、時刻表や路線図の改良、路線バスを使ったオリエンテーリングの実施などの利用促進策に積極的に取り組んでいるところです。
また、現行のバスダイヤは、朝夕の通勤・通学時間帯に必要とされる路線を基本にして、市街地を起点・終点として運行していますが、郊外においては、昼間の買い物や通院を目的としたバス運行の要望が多く寄せられています。
このため、実証モデル事業として、厚南地区において、地域内を循環する厚南循環線の検討を進めています。これまで、地域住民を交えて、具体的にルート案や停留所などについて協議し、新規路線の周辺自治会を対象として、需要把握のためのアンケート調査を実施したところです。他の地域においても、利用者の視点に立ち、地域の特性に応じた路線再編に取り組んでいきます。
今後とも、お客様にわかりやすく、利用しやすく、安心して乗ってもらえる市営バスとなるよう、創意と工夫を凝らして利便性の向上に取り組みます。
以上で、私の壇上での答弁を終わります。
◆田中文代
御答弁ありがとうございました。
それでは、自席から再質問、要望等をさせていただきたいと思います。
まず、御答弁の中で、宇部市の公共交通のあり方検討協議会について触れておられましたが、この協議会については、私も先日、担当部課の方から要綱、議事録等をいただきまして読ませていただきました。
市長に委嘱された学識経験者、交通事業者、自治会推薦者、学校関係者、商業関係者、社会福祉法人関係者、企業等の代表の方など、計18名の委員の方たちによって構成される協議会で、第1回、ことし3月28日の議事録によりますと、「この協議会で話し合ったことは、今後どう反映されていくのか」という委員の方の問いに対して、事務局、つまり総合政策部の職員の方ですが、「これまで様々な公共交通のアンケートを実施してきたが、施策に生かしきれていないので、まずはデータを見て現状を良く知っていただきたい。その上で、どうすれば公共交通を利用してもらえるのか、あるいは交通体系に限らずまちづくりをどうするのかなど、具体的な方針を決めるための御提言をいただきたい」と答えておられます。
会議は全5回の予定で、8月に第4回までを終えたところですが、現在までに公表されている議事録を読ませていただいての感想ですが、委員の方の御意見の中にも、「この協議会がバス利用の黒字化を目指すのか、ある程度整理縮小し安定した運営を考えようとするのか、目的がよくわかりません」とあるように、それぞれの方がそれぞれの立場から種々の意見を出されており、これを会議の最初に事務局の方が説明されたように、具体的な方針を決めるための提言という形に持っていくには、まだ10月に1回会議が残っておりますが、かなり難しいように思います。
そこで、再質問の1点目ですが、先ほど御答弁には、今後協議会の議論を踏まえ、役割に応じた効率的な路線の見直しを進めていくとありましたが、具体的にはどのように進めていくおつもりなのか教えてください。
◎片岡昭憲総合政策部長
お答えいたします。
今、宇部市の公共交通のあり方検討協議会は、議員がおっしゃいましたように4回開催して、公共交通全般に対して役割分担等、さまざまな御意見が出されております。
今、意見具申の取りまとめをしている段階ですので、この意見具申をいただいた後は、公共交通の総合的な方針について早急に取りまとめていきたいと考えております。
以上です。
◆田中文代
ありがとうございました。
まずは取りまとめるということでよろしいのですかね。今回読ませていただいた協議会の議事録の中には、委員の方からこういう御意見が出ておりました。「宇部市は資料づくりについては熱心だが、実行力が乏しい。まちの微妙な変化をもっと察知することが大切だと思う。活性化は計画を立てた中の1つでも実行し、実現に向けて行動するのが本当の活性化ではないか。」、その他、私も2年前の一般質問のとき活用させていただいたこの宇部市地域公共交通総合連携計画2009ですが、この冊子についても、「この計画がどういう考えでつくられ、どこまで実行できているのか、どこの部分が現実的でなかったのか、どこがよいので今回も盛り込んでいくのか、なぜ低炭素の計画に反映できないのかなど、評価や進捗をまとめるべきではないか」という御意見も出ております。
残念ながら、この冊子の中に上げられている、宇部市の交通事業についての課題のその多くについては、平成21年3月──4年前になりますが、この冊子が発行されて以来、市民の方にとっては、余り改善されたという実感がないのではないかと思われます。
そこで、再質問の2点目に移りたいと思いますが、平成23年6月議会で私が行いました一般質問の中で、この冊子の中にもございますけれども、バス事業の効率化のため、幹線路線と地域路線を組み合わせたハブ化を検討しているところであるという御答弁がありましたが、現在ハブ化については具体案が出ておりますでしょうか、お答えいただければと思います。
◎芥川貴久交通事業管理者
幹線路線と地域路線を組み合わせたハブ化という御質問でございますが、現在、バス事業の効率化のために、ハブ化は有効な手段であるというふうに考えております。今、厚南循環線で、地域路線ということで考えておりますが、乗り継ぎ起点となる宇部駅、またゆめタウン宇部で幹線路線に乗りかえれば、市街地に接続しており、ハブ化のモデルでもありますので、今後実施に向けて検討していきたいというふうに考えております。
以上でございます。
◆田中文代
御答弁にもありましたが、厚南地域について循環線をまずモデル事業としてやってみるということですね。
ハブ化については、私も常々都市計画と一緒に考えていかなくてはならないと考えております。私個人は、これからも人が恒常的に集まる場所として、中心部であれば山大医学部、東であれば宇部興産中央病院、西であれば宇部西リハビリテーション病院といったような、大きな医療施設を拠点としたハブ化の構想もあっていいのではないかと考えます。
現在のような宇部新川駅、宇部駅、交通局、八王子といった主に市街地のごく限られた発着点を軸に運行路線を考えていたのでは、おのずと走行距離が長くなり、バスの台数が限られている以上、路線の運行便数は減っていくものと思います。
現状では、便数が少ないのでバスは不便で乗れない、そして乗客数が減った結果として収益が上がらず赤字がかさみ、経営を維持するためには、また便数を減らさざるを得ないという、卵が先か、鶏が先かのような負のスパイラルをどう断ち切るのか。再質問の3点目になりますが、これまでも御答弁で挙げていただいたような数々の策を打ち出されてきたにもかかわらず、利用者の減少傾向が続いていることについて、事業者としてその理由はどのようにお考えでしょうか。
◎芥川貴久交通事業管理者
利用者の減少傾向が続くその理由はという御質問でございますが、ライフスタイルの変化やマイカーの普及によるところが大変大きい。また、毎年実施しております乗降客調査の結果では、特に高齢者の方々の利用が減少しており、これは自家用車で移動される高齢者の方が増加しているということが一因であるというふうに考えております。
このような状況にありますが、根本的にはやはり乗っていただく工夫、すなわち利便性の向上が課題であると考えております。先ほど市長が壇上でも御答弁いたしましたように、現在実証モデル事業として朝夕の通勤・通学時間帯とは別に、昼間の買い物や通院での利用を目的とする厚南循環線という検討を進めております。
やはり時間にあった利用形態ということを実行しながら、実証していきたいということで、今後他の地域においても、地域の特性に応じた路線再編、さらなる利用性の利便性の向上に取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
◆田中文代
ありがとうございました。
ことし4月29日、日本経済新聞の朝刊に「鉄道・バス、人口減響く、廃線、ブレーキきかず、自治体・住民、再生へ躍起」という見出しの記事が載っておりました。地域の貴重なローカル路線について、マイカーの利用に人口減が重なって利用者が減り、事業者は赤字を抱えきれずに撤退。失った路線を何とか再生しようと自治体や住民の苦闘が続いているといった内容の記事です。
この中で、三重県玉城町の社会福祉協議会が運営するオンデマンドバスについて紹介されていました。スーパーや医療機関、郵便局など、町内の30カ所以上にタッチパネル式の予約用パソコンが置いてあり、利用者がタッチパネルを操作することによって、最短30分程度でバスがやってくるようになっており、システムが経路を自動作成するため、途中で新たな予約が入っても、到着時間がほとんど変わらないというのが特徴だそうです。
町と協議会はバス会社が大幅に縮小した路線を補おうと、一度は自前でバスを運行したそうですが、30人乗り車両の乗客数は平均4.5人しかおらず、ガラガラバスとからかわれていたのが、現在ではITを利用したオンデマンドシステムで、1日平均約110件の予約が入るとのことです。
これは、思い切って先行投資をして利便性向上に舵を切ったという一つの例であり、ほかの都市にそのまま当てはめて成功するかどうかわかりませんが、とりあえず何かを始めたところについては、住民の暮らしに変化が起こってきているということです。
同じ新聞記事の中に、岡山県笠岡市の井笠鉄道が運営していたバス路線を、撤退後に引き継いだバス会社の代表の方のお考えが紹介されていました。「全国の地方バスの7割以上が赤字で、その半分が5年以内に破綻する可能性がある。経営難の主因である人口減は今後も続く。路線ごとに赤字を補填する現行の補助金制度を根本から見直す必要がある」とのことでした。
また、これも同じ記事の中に、国土交通省交通計画課課長の「公共交通は地域が支えないといけないという意識の転換が必要だ」という言葉もありました。バス事業について、状況が厳しいのは日本全国津々浦々同様です。しかし、みんなそうなんだからといってできない理由を上げて、それを続けていても時間が無為に過ぎるだけです。
御答弁にありました厚南地区における厚南循環線の実証モデル事業につきましては、ぜひこれがバス事業の一つの突破口になればと願っておりますし、これは要望させていただきたいと思いますけれども、この事業を他人ごとと思われないように、市内全域の方々に広く周知していただいて、一緒に考えていただきたい。この周知の努力をぜひしていただきたいと思います。
最後に1つ確認ですが、バス事業についてはその施策化の観点から、予算化の大きな部分を総合政策部のほうで担っておられ、実務のほうは交通局で担っておられるという構造になっており、今回私の準備した質問についても、どちらからお答えをいただくべきなのか、グレーゾーンにはまったような感じがありました。
事業そのものについては、総合政策部と交通局の双方において明確に役割を分担しながら、同じベクトルを持った運命共同体として推進していただく。さまざまな要望に対しても、一つのチームとして使命感を持ってやっていただくという認識でよろしいでしょうか。双方にお伺いしたいと思います。
◎片岡昭憲総合政策部長
議員さんがおっしゃるとおり、タッグを組んで一緒に頑張っていかなければいけないと考えております。
以上です。
◎芥川貴久交通事業管理者
交通局も当然総合政策部と一緒に、やはりまちづくりの観点ということが非常に重要というふうに考えておりますので、タッグを組んでやっていきたいというふうに思います。
◆田中文代
ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
これで私の全ての質問を終わります。